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広島高等裁判所岡山支部 昭和49年(ラ)4号 決定 1974年5月27日

抗告人

宮崎宗一

主文

原決定を取消す。

原裁判所の昭和四九年三月八日付競売期日公告に基づく別紙物件目録記載の物件に対する競落を許さない。

理由

本件抗告の趣旨は「原決定を取消し、本件競落を許さない。」との裁判を求めるというにあり、その理由は別紙記載のとおりである。

よつて抗告理由(一)の点について按ずるに、競売法二九条一項、民訴法六五八条第一号によれば競売期日の公告には競売に付する不動産の表示を記載することを要するものであるところ、右の立法趣旨はこれによつて競売の目的である不動産を特定し、その同一性を知らせると同時に他の公告記載事項と相まち、できる限りその実質的価値を了知させ、これを信じて競売に参加する人に不測の損害を生ずることがないようにし、もつて利害関係人の利益保護を計ろうとするにある。

従つて競売の目的たる土地の表示は登記簿上の表示のみならず地目、坪数が相違するときは実況及び実測坪数を、又区画整理中で仮換地の指定があつたものについては仮換地の場所、坪数、合併仮換地である場合にはその旨をも併記すべきであり、さような措置をしないで公告に登記簿上の表示のみを為しそのため公告の目的を達することができないものである場合は競売法に準用される民訴法六五八条一号の表示を欠く違法があるというべきである。

これを本件についてみるに、本件記録によれば抗告人所有の本件競売物件のうち別紙目録(1)記載の土地は岡山市戦災復興土地区画整理事業に基づく区画整理が施行され昭和二五年一二月仮換地の指定がされたものであるが、その際本件土地と岡山市小原町一一三番地宅地〇、六六m2(現在申立外高山芳太所有)が当時同一人の所有であつた関係から、いずれもそれぞれ減歩された上右両地の合併仮換地として同一場所に一八六、〇四m2の仮換地指定がなされたこと、その後右両土地が抗告人および右高山にそれぞれ譲渡されたため、右仮換地は所有者を異にする両土地の合併仮換地となつたこと、ところが、本件競売公告には、土地の表示として登記簿上の地目、地積に「仮換地面積一八六、〇四m2」と付記したのみであることが認められる。

右事実によれば前記競売公告において本件(1)土地の表示として付記された仮換地一八六、〇四m2は抗告人所有の本件(1)土地と申立外高山所有土地の合併仮換地であるのに拘らず、その旨の表示を欠き、右仮換地の全部を本件(1)土地の仮換地として表示したもので、そうすると右公告によつて本件(1)土地を競落した者は不測の損害を蒙るおそれがあるといわなければならない。されば右公告中(1)土地に関する部分は前記法条に違背し不適法なものというべきであり民訴法六七四条、六七二条四号により本件競落中右(1)土地に関する部分はこれを許すべきでない。また右公告によれば本件競売において(1)土地と他の物件((2)建物)とは一括競売に付せられていることを認め得るところ、(1)土地を除外して(2)物件についてのみ競落を許すときは右競売条件に牴触するから、結局本件競落はその全部につきこれを許すべきでない。

よつて抗告理由(二)点に対する判断を省略し、原決定を取り消して前記公告に基づく本件競落はこれを許さないこととし、主文のとおり決定する。

(渡辺忠之 山下進 篠森眞之)

抗告の理由<省略>

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